晴れの合間の、雲のヴェール。
雨の合間の、陽のかさなり。
嵐のように激しい風雨に、うねる波間。
頼りないトタン屋根と共に、その荒ぶる自然の轟音におびえていたはずなのに、
いつのまに、あっけらかんと拍子抜けするような青空。
緋寒桜の誇り高く強い桃色を忘れてしまった頃、
ふと気づけば、あの甲高い鳴き声の鳥も姿を消していた。
やがて訪れる暖かさに、身体と心がほぐれていく季節。
眠っていた花たちは次々と咲き始め、
新緑のなか、色彩は踊る。
しばらくぶりの虫や鳥が顔を出し、
空と海の青の間に、その歌声が聴こえる。
約束してもいないのに、ちゃんとやってくる。
恭しくもある、神様へのあいさつだろうか。
季節はすすんでいく。
私たちはどこへ行くのだろう。
―うむてぃさえ うりば
あとあさきど なりゅり
してぃや みでぃぐるま
まわてぃ めぐる
(想い続けることができたなら
いつになるか わからなくとも
季節が水車の如く廻るように
やがてその報いはやってくるであろう)
海の向こうに、ネリヤカナヤと呼ばれる場所がある。
善きものはそこから、来訪すると信じられている。
きっとそれは、私たちがいつか辿り着く、その、
どこか。
それは信じるとも覚束ない想い、かもしれない。
でもきっと、それを持ち続ける限りは、少しでも近づけるはずだ。
未だ見ぬ、その場所へ。
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