BIRD SONG JOURNAL / 結

2019.5.18

奄美各地でこの時期行われる「浜下れ(はまおれ)」という行事。

奄美では薩摩藩の統治時代に稲作からさとうきび栽培に転換させられた農家が多く、稲作文化は衰退の一途を辿った。
しかしながら、農村集落のお祭りは、稲作時代のまま受け継がれているものが多く、5月~6月に行われる豊作祈願のお祭り、「浜下れ(はまおれ)」もその一つである。

今も農村部では地域の助け合い『結(ゆい)』が脈々と受け継がれている。
「浜下れ」は元々、稲作期のスタートに山手の田畑から持って来た虫を海に投げ入れ、”今年も虫があまりつかず作物が健やかに育ちますように”という願掛けをしたところから始まるお祭りだ。

最近では日中は集落民の交流を兼ねた舟こぎ大会が行われることが多く、夕方には集落内の同じ「条(海と山を繋ぐ一筋の道)」を通って海に下りる人々が、最寄の浜に集まり、“今年もご近所助け合って頑張りましょう”という懇親会が開かれる。

舟こぎ競争では、集落をいくつかのエリアに分けた班別・年代別などの競争が行われるが、パワーがあるからと言って早いわけではなく、ヤホ(櫂)運びの息が合っていることが勝敗の決め手となる。
年代別では毎年同じメンバーで漕ぎ続けている60代のチームがダントツに早かったりするのが面白い。
赴任してきたばかりで漕ぎなれない小学校の先生チームの舟が迷走するのもお約束。

浜下れの日、夕暮れ時の浜辺にはご近所さんが勢ぞろいする。90歳を超えるオジ・オバから昔の集落や浜の様子、若いころの恋の話などを聞かせてもらっているうちに、オバがこの集落にしか伝わらないシマ(集落)唄を歌い始め、自然と幼馴染のオジの合いの手が入る。

人のつながり・助け合うこと・お互いを知り合うこと。
この島に受け継がれる結の心はひとの心を温かくする。

K