BIRD SONG JOURNAL / とぅとがなし

2019.12.26

湿った空気と暖かい陽射しに気を緩ませ、外で遊んでいるうちに、
ニシ(北風)が身体を吹き抜け、くしゃみをひとつ。
子どもたちは、夕飯をどうするかなんて気にするわけもなく、ずっと歌をうたっている。

遠く微笑む繊細な三日月は、何かを待ちわびているようだ。

冬至も過ぎた大潮の真夜中、イザリという漁が行われる。
潮が最大限に引いて、いつもは海面下にある珊瑚たちが顔を出し、そこは陸となる。

真っ暗になった遠浅の環礁に佇むと、満天空の下、自分も星になってしまったかのようだ。

足元の潮だまりには、取り残された貝や蛸がいるかもしれない。
灯りを点けて、ティル(竹製のかご)の持ち手を額にかけて、探し歩く。
見事に捕らえたあかつきには、とっておきのごちそうとなる。

マンジュウヒトデは食べられないが、ぷっくりとした愛らしい姿で
ともすればシリアスな暗闇に、ユーモアを誘う演出をしてくれた。

はるか縄文の昔から、きっと、ほぼ変わらないような一途な方法で、
人間と動植物の、お互いの命をまっとうする暮らしは、いまもここで、続いている。

そうやって生きてきたこのシマの人々は、ご先祖様とも一緒になって、
生きる上でのすべてに感謝をしているように思える。
それでもって、かっこいいところは、それがいつも
なんとなく、だからなんだ。

そして今日も「とぅとがなぁーし」と言って、手を合わせる。
きっとまた続く光に向かって。

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