BIRD SONG JOURNAL / 地球に生きるということ

2020.1.25

マングローブとは海水と淡水が入り混じる汽水域に生息する植物の総称。
様々な種類の木がある。

奄美大島のマングローブは国内では西表島に次ぐ広さを誇っており、主にオヒルギと
メヒルギで構成され、日本でオヒルギが生息する北限となっている。
オヒルギの根は折り曲がるように生えるのが特徴で、その根は膝を曲げた形に似ていることから
“膝根(しっこん)”と呼ばれている。
“膝根”は呼吸根でもあり、水中にある根の周りの土の空気が入れ替わらないため、折り曲がった
根が水の上に出ることで空気中の酸素を取り込んでおり、また光合成もする。

オヒルギは”タコさんウインナー”のような形の赤い花を咲かせる。花の中にできる実は樹上で
胚軸を出してから水中に落ちる仕組みとなっており、水の流れるマングローブ林において
少しでも発芽の可能性が高くなるように進化したことが窺える。

林の中のオヒルギの無数の膝根は、カヌーで通りすがる私達を見つめる無数の妖精に見えた。

太古の昔から海中に沈んだことがないこの島の動物や植物は、その環境に適応するように
進化を遂げてきたのだ。
その姿を見て、私たち人間は生息する環境に適応することにあまりに鈍感になっていることに気づかされる。
科学や文明の進化によって利便性が最優先されてきた近代社会の在り方が問われるように、
異常気象、気候変動、原因不明のウイルス…と、いま私たちは地球からの警告を受けているのだ。

マングローブ林で出会った妖精たちは、地球上で唯一自分本意な生き方をしている生物である
”人類”を冷ややかに見つめているようにも見えた。

K