BIRD SONG JOURNAL / いただきます

2018.12.8

島のオジやオバは、まだ暖かく、葉っぱをムシャムシャと食べてしまう虫がたくさんいるうちに
冬野菜の種を蒔く。

“早めに蒔かんと、正月野菜に間に合わんわけよ。”と隣の兄ィ。
…なるほど。
お正月にたくさんの親戚が集まる島の家庭では、畑で作った野菜を使ったもてなし料理が定番。
芽吹いたばかりの私の畑と比べ、島の畑は一足早く収穫間近だ。

大家さんに”裏庭の荒地を畑にしてくれたら嬉しい”と言われ、夢だった自分の菜園を手に入れた。
集落内で都会から来た者が畑を耕しているのが物珍しいのか、通りがかりのオジやオバが
嬉しそうにコツを教えに来てくれる。

霜の降りることがない南国。
冬には大陸からの寒気が程よく通り雨をもたらし、水撒きはあまり必要ない。
台風の心配がつきまとう夏の野菜に比べ、冬野菜は適切な時期に間引きさえしていればよく育ち、
根菜類の葉は青々と新鮮でまるで葉野菜のように食べることができる。
一粒で二度美味しい…とはこのことか。
手塩にかけた野菜達はあまりに愛おしく、余すところなく食べてあげたい…と保存食にする術も
身についてきた。

近所の兄ぃが島ダコを突いてきて晩酌用にいただいたり、知り合いのオジが狩ってきたイノシシの
肉をいただいたり…。
お礼のクッキーには山で見つけたというお礼の島松茸が返ってくる。
庭のテーブルに黙って置いてある野菜は海側のオジからの差し入れ。
裏の玄関脇に積み上がった大根は裏のオバからの差し入れ。

動物や植物の命をいただくということや、人に感謝していただくという意味で、
“いただきます”
の本当の意味がわかった気がする。

奄美の冬はほっこり気持ちがあたたかい。

K