BIRD SONG JOURNAL / 冬の海の味

2021.1.24

奄美大島の冬の海。

真っ暗闇な水平線を眺めていると、チラチラと光るライトが見える。

ゆっくりと動き、時折立ち止まるこの光は“いざり漁”をする人たちの姿。

イギュンやモリを手に持ち、テル(竹籠)を背負い、リーフブーツを履き、命綱ともいえる明るいライトを身につけ、干潮で顔を出したリーフ(サンゴ礁)の上を沖へ向かって歩く。

足元をライトで照らしながら、サンゴに隠れている貝やタコ、水溜りに潜む魚や伊勢海老を探す。
風が吹き、水面が揺れる瞬間は、いったん立ち止まらないと前に進むことができない。
持っているライトをいたずら心で消してしまったときは、死の恐怖を感じるほどの暗さになるけど、空に浮かぶ星の多さに気づかされる。

だんだんと歩き方を覚え、目が慣れると、魚や蟹、ウミガメや伊勢海老の赤ちゃん、たくさんの海の住人に出会えるようになる。さらに、タコや貝がテルに入っていくのを見ていると、冬の夜の海の面白さを味わってしまう。

いざりが終わり、家に着くのは3時ころ。次の日は眠たい目を擦りながら出勤し、次行けるのはいつかなあ、と潮見表を眺める。

「漁業権のなかった昔は、いざりに行くと誰でも何でも捕ることができたんだよ。タコもウニも貝も魚も、もっとたくさんいたんだけど・・・昔はガスランプで、行く回数が少なかったからなのかねぇ。」私の親戚のおばは、笑いながらそう教えてくれた。

今は、いざりをする人も、いざりで捕れるものも変わってきているけど、自然の厳しさも面白さを知り、上手に向き合いながら暮らしている人たちの生活を、一緒に楽しみたい。

ak